【第4回】セロトニンを増やす方法10選|食べ物・運動・生活習慣の改善法|五反田ストレスケアクリニック|心療内科・精神科

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【第4回】セロトニンを増やす方法10選|食べ物・運動・生活習慣の改善法

【第4回】セロトニンを増やす方法10選|食べ物・運動・生活習慣の改善法|五反田ストレスケアクリニック|心療内科・精神科

2025年7月14日

【第4回】セロトニンを増やす方法10選|食べ物・運動・生活習慣の改善法

セロトニンを増やす方法10選|食べ物・運動・生活習慣の改善法

セロトニンを自然に増やす方法とは

前回は、セロトニン不足がもたらす症状と精神疾患との関係について解説しました。今回は、薬に頼らずにセロトニンレベルを自然に向上させる方法について、科学的根拠に基づいて詳しくご紹介します。

POINT

セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、気分の安定や睡眠の質に大きく関わっています。自然な方法でセロトニンを増やすことで、心身の健康を改善できる可能性があります。

食事による方法

セロトニンの原料となるトリプトファンを豊富に含む食品を摂取することで、セロトニンの産生を促進できます。

トリプトファン豊富な食品

トリプトファンを多く含む食事には、乳製品(特にヨーグルトや牛乳)、卵、七面鳥、鶏肉、魚、大豆製品(豆腐、納豆)、ナッツ類(特にアーモンドやピーナッツ)、オートミール、バナナなどが挙げられます[1-3]

乳製品の中でも、ギリシャヨーグルトや牛乳は特にトリプトファン含有量が高いことが報告されています。また、オートミールやバナナも植物性食品として比較的多くのトリプトファンを含みます。動物性食品では、鶏肉や魚、卵も良好な供給源です[2,3]

トリプトファンは必須アミノ酸であり、体内で合成できないため、これらの食品からの摂取が重要です[1,3]

トリプトファンを多く含む食品の例:

乳製品(ヨーグルト、牛乳、チーズ)、卵、七面鳥、鶏肉、魚(サーモン、マグロ、カツオ)、大豆製品(豆腐、納豆)、ナッツ類(アーモンド、ピーナッツ)、オートミール、バナナなど

セロトニン産生を助ける栄養素

ビタミンB6(ピリドキサールリン酸)は、トリプトファンからセロトニンへの生合成過程で必須の補酵素として機能し、セロトニン産生を促進する上で重要な栄養素です。また、炭水化物の摂取はインスリン分泌を促し、血中の他の中性アミノ酸の筋肉への取り込みを増やすことで、トリプトファンの脳内移行を相対的に高め、セロトニン合成を促進します[4]

さらに、抗酸化物質(ポリフェノールやビタミンC、Eなど)も、慢性炎症や酸化ストレスによるトリプトファンの異化(キヌレニン経路へのシフト)を抑制し、トリプトファンのセロトニン経路への利用を高める可能性が示唆されています。このため、トリプトファン以外にも、ビタミンB6、炭水化物、抗酸化物質の十分な摂取がセロトニン産生をサポートする栄養素として重要です[5]

栄養素 役割 多く含む食品
ビタミンB6 セロトニン合成に必要な補酵素[4] バナナ、さつまいも、鶏肉、サーモン
炭水化物 トリプトファンの脳内移行を促進[4] 全粒穀物、玄米、オートミール
抗酸化物質 トリプトファンの異化を抑制[5] ブルーベリー、緑茶、ダークチョコレート

運動による効果

運動はセロトニン(5-HT)神経系を活性化し、脳内セロトニン濃度やその前駆体であるトリプトファンの脳内利用率を上昇させることが、動物およびヒトの研究で示されています。特に有酸素運動や高強度の運動は、血清セロトニン濃度の上昇や、脳内でのセロトニン合成促進に寄与します[6,8-9]

慢性的な運動習慣は、セロトニン神経系の機能を繰り返し活性化し、抗うつ効果や不安軽減、認知機能の改善に関与していると考えられています。また、運動によるセロトニン増加は、海馬の神経新生や神経可塑性の促進、抗炎症作用などを介して、うつ病や不安障害の予防・治療効果にも寄与します[10-13]

さらに、運動の種類や強度、持続時間によってセロトニン系への影響は異なり、特に自発的かつ十分な量の運動がセロトニン系の活性化と精神的健康増進に有効であることが示唆されています[15-17]

POINT

運動はセロトニン神経系を活性化し、気分改善や抗うつ・抗不安作用、認知機能向上など多面的な精神的健康効果をもたらすことが、現時点の医学的知見のコンセンサスです[6,10,11,13,15,16,17]

効果的な運動の種類

🏃 有酸素運動

推奨:週3-5回、30-60分
効果:セロトニン濃度の直接的な上昇[6]

🚶 ウォーキング

推奨:毎日20-30分の快適なペース
効果:トリプトファンの脳内利用率向上[9]

💪 筋力トレーニング

推奨:週2-3回、中強度
効果:神経可塑性の促進[11]

🧘 ヨガ・太極拳

推奨:週2-3回、45-60分
効果:自律神経の調整と気分改善[10]

運動によるセロトニン増加のメカニズム

  1. トリプトファンの脳内取り込み促進:運動により分岐鎖アミノ酸が筋肉に取り込まれ、トリプトファンが血液脳関門を通過しやすくなる[8,9]
  2. セロトニン神経系の直接的活性化:運動が背側縫線核のセロトニン産生細胞を刺激[14]
  3. 神経新生と神経可塑性の促進:海馬における5-HT3受容体を介した神経新生[13]
  4. 抗炎症作用:炎症性サイトカインの減少によるセロトニン系の保護[11,14]

セロトニンを増やす効果的な運動方法 – ウォーキング、ジョギング、ヨガなど、自宅でもできる簡単な運動を紹介

光療法と概日リズム

日光への曝露はセロトニン産生を増加させることが知られています。

脳内のセロトニン代謝回転は、日照時間や日光曝露量と正の相関を示し、日照が長いほどセロトニンの産生や放出が増加します。特に、冬季など日照が短い時期には脳内セロトニン代謝が低下し、逆に日照が増えるとセロトニン産生が上昇することが示されています[18-19]

この機序には、網膜を介した光刺激が脳内のセロトニン神経系に影響を与えることが関与しています。また、皮膚でも紫外線B(UVB)曝露によりセロトニンが局所的に産生されることが報告されており、皮膚の神経内分泌系の一部として機能しています[20-21]

さらに、日光曝露がセロトニン輸送体(SERT)の発現やセロトニン1A受容体の結合能にも影響を与え、これらの変化が気分や行動の季節変動、うつ病や季節性情動障害の発症リスクに関与していると考えられています[22]

POINT

日光への曝露は脳内および皮膚でのセロトニン産生を促進し、気分や精神状態の調節に重要な役割を果たしています[18,20,22]

推奨される光曝露

項目 推奨値
時間帯 朝7-9時(起床後30分以内が理想)
光の強度 2,500-10,000ルクス(自然光または光療法器)
持続時間 15-30分(自然光)、30分-2時間(光療法器)
頻度 毎日継続的に(特に冬季)

日常生活での実践的アドバイス

朝のルーティン(6:00-9:00)

  1. 起床後すぐにカーテンを開けて日光を浴びる
  2. トリプトファンを含む朝食(卵料理、ヨーグルト、バナナなど)
  3. 軽い運動やストレッチ(10-15分)
  4. 5-10分の簡単な瞑想

セロトニンを増やす理想的な朝の過ごし方 – 起床から朝食まで、セロトニン産生を促す朝のルーティンを実演

昼間の活動(12:00-15:00)

  1. 昼休みに屋外で15分散歩
  2. バランスの良い昼食(魚、大豆製品、野菜)
  3. 適度な水分補給
  4. ストレスを感じたら深呼吸(4-7-8呼吸法)

夜のルーティン(18:00-22:00)

  1. 就寝2-3時間前から照明を落とす
  2. リラックスできる活動(読書、入浴など)
  3. 寝る前の瞑想やストレッチ(10分)
  4. スマートフォンやPCの使用を控える

セロトニンを増やす方法トップ10
1

規則正しい有酸素運動

週3-5回、30分以上の運動が最も効果的

2

朝の日光浴

起床後30分以内に15-30分の日光曝露

3

トリプトファン豊富な食事

魚、卵、大豆製品を積極的に摂取

4

瞑想・マインドフルネス

1日10-20分の継続的な実践

5

質の良い睡眠

7-8時間の規則正しい睡眠

6

社会的つながり

友人や家族との良好な関係維持

7

マッサージ

定期的なマッサージでストレス軽減

8

笑うこと

積極的に笑う機会を作る

9

音楽を聴く

好きな音楽でリラックス

10

感謝の習慣

感謝日記をつける

まとめ

セロトニンを自然に増やす方法は、特別な道具や高価なサプリメントを必要としません。バランスの良い食事、規則的な運動、十分な日光浴の実践により、セロトニンレベルを健康的に向上させることができるかもしれません。

これらの方法は、すぐに効果が現れるものではありませんが、継続することで確実に心身の健康に良い影響をもたらします。重要なのは、自分のライフスタイルに合った方法を選び、無理なく続けることです。

POINT

セロトニンを増やす方法は個人差があります。複数の方法を組み合わせて、自分に最も効果的な組み合わせを見つけることが大切です。症状が改善しない場合は、必ず医療機関を受診してください。

よくある質問
Q. セロトニンを増やす食事は、どのくらいで効果が現れますか?
A. 個人差はありますが、一般的に2-4週間程度の継続的な食事改善で、気分や睡眠の質に変化を感じる方が多いです。ただし、食事だけでなく運動や睡眠習慣も併せて改善することで、より効果的な結果が期待できます。
Q. 運動が苦手でも、セロトニンを増やすことはできますか?
A. もちろん可能です。激しい運動でなくても、1日20-30分の散歩や軽いストレッチから始めることができます。また、日光浴、瞑想、適切な食事など、他の方法を組み合わせることで十分な効果が期待できます。重要なのは継続性です。
Q. セロトニンサプリメントは効果がありますか?
A. セロトニンそのものを含むサプリメントは血液脳関門を通過できないため、直接的な効果は期待できません。一方、トリプトファンや5-HTPなどの前駆物質サプリメントは一定の効果が報告されていますが、医師に相談の上で使用することをお勧めします。自然な方法を優先的に試すことが重要です。

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監修・執筆者

片山 渚 医師

五反田ストレスケアクリニック院長

  • 精神保健指定医
  • 日本医師会認定産業医
  • 産業保健法務主任者(メンタルヘルス法務主任者)
  • 健康経営アドバイザー

大学病院から民間病院まで幅広い臨床経験を活かし、患者さんが安心して治療を継続できるよう、わかりやすい情報提供を心がけています。

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の症状や状況に対する医学的アドバイスではありません。医療に関する決定は、必ず医師と相談の上で行ってください。本記事の情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当院は責任を負いかねます。


参考文献

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  3. Kałużna-Czaplińska J, Gątarek P, Chirumbolo S, Chartrand MS, Bjørklund G. How Important Is Tryptophan in Human Health?. Critical Reviews in Food Science and Nutrition. 2019;59(1):72-88. doi:10.1080/10408398.2017.1357534.
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  6. Zimmer P, Stritt C, Bloch W, et al. The Effects of Different Aerobic Exercise Intensities on Serum Serotonin Concentrations and Their Association With Stroop Task Performance: A Randomized Controlled Trial. European Journal of Applied Physiology. 2016;116(10):2025-34. doi:10.1007/s00421-016-3456-1.
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