従業員である前に、人間だ。
働く世代にとって、仕事は生活の一部であり、生きがいであり、ときに自分自身を追い詰めてしまう存在でもあります。けれども、職場での肩書きや役割にかかわらず、私たちはまず“ひとりの人間”です。
仕事上のストレスや環境変化に苦しみ、言葉にできない不安を抱えるのは、ごく自然なこと。どうか「自分だけが弱い」「受診するなんて大げさだ」と思わずに、一度こころの声に耳を傾けてみてください。
私自身、大学に入る前から「人は何を考え、どう感じ、どんな言葉でコミュニケーションをするのだろう」といった問いに強く興味を抱き、常に自分の内面を観察してきました。その過程で、ときには繊細さゆえの生きづらさを感じることもありましたが、今ではそれが私の強みだと感じています。自分自身を見つめ、悩み抜いてきたからこそ、同じように苦しむ方の思いに深く寄り添えると確信しているのです。
臨床の現場では、同じように見える症状でも、背景には人それぞれの職場環境や人間関係、ライフステージの変化があり、その悩みは十人十色です。だからこそ、治療方針は「薬を出して終わり」ではなく、きちんとお話を伺いながらオーダーメイドで考える必要があります。
実際、「忙しそうで話を聞いてもらえなかった」「ただ薬だけ渡された」という声を耳にするたび、医師が患者様の言葉を聞く大切さを痛感します。
こころの問題は、手術のように一度で切り取れるものではありません。じっくり時間をかけながら、少しずつ自分らしさを取り戻し、新たな一歩を踏み出す準備を整えることが大切です。
その道のりを“仲間”や“伴走者”のように支え続けるのが、私が考える精神科医の役割。尊敬する先人たちが説いてきた「病気ではなく病人を診よ」という教えも、症状だけを見るのではなく、その奥にある人生や人間関係までも視野に入れる姿勢を意味しています。
そこで当院は、まだまだ敷居が高いと感じられがちな精神科を、少しでも通いやすい場所にしたいと考え、駅から少し離れた静かなロケーションを選びました。人目を気にせず来院できるよう配慮しつつ、プライバシーにも十分な注意を払っています。
周囲の目や職場の都合を気にしてしまいがちな方でも、安心してご相談いただけるよう、落ち着いた環境づくりを心がけています。
私は患者様一人ひとりの人生背景や思いに寄り添い、ともに道を探していきたいと考えています。
どうか、ご自身のつらさを否定せず、まずは一度ご相談ください。あなたの言葉にならない声もしっかり受け止め、こころが少しでも軽くなるよう、全力でお手伝いいたします。