双極性障害|五反田ストレスケアクリニック|五反田駅徒歩7分の心療内科・精神科

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双極性障害

双極性障害|五反田ストレスケアクリニック|五反田駅徒歩7分の心療内科・精神科

双極性障害(躁うつ病)

頬に手を当て首をかしげる女性

双極性障害(躁うつ病)は、気分の極端な変動を特徴とする精神疾患です。通常の気分の浮き沈みとは異なり、高揚感や活動性が極端に増す「躁(そう)状態」と、意欲や興味の著しい低下を伴う「うつ状態」を繰り返します。この記事では、双極性障害の症状、種類、原因から治療法、生活上の工夫まで、精神科医の視点から詳しく解説します。

双極性障害の基本と種類

双極性障害は、全世界で人口の約1-2%が経験する慢性的な精神疾患です。日本においても同様の有病率が報告されており、決して珍しい病気ではありません。適切な治療を受けなければ、日常生活や社会生活に深刻な影響を及ぼし、自殺リスクの上昇につながる可能性もある重要な健康課題です。

主な種類と特徴

双極性障害は主に以下の3つのタイプに分類されます。

  1. 双極I型障害
    完全な躁状態(激しい気分の高揚や活動性の増加)のエピソードを少なくとも1回経験します。この躁状態は通常7日以上続き、入院が必要になるほど重症なケースもあります。うつ状態も経験することが一般的ですが、診断には必須ではありません。
  2. 双極II型障害
    完全な躁状態ではなく、より軽度の「軽躁状態」と重度のうつ状態を繰り返します。軽躁状態は躁状態よりも症状は軽いものの、やはり日常生活に支障をきたす可能性があります。うつ状態が長く続くことが多いため、単なるうつ病と誤診されやすい特徴があります。
  3. 気分循環症(軽症双極性障害)
    軽度の躁状態と軽度のうつ状態が長期間(2年以上)にわたって繰り返されます。症状は双極I型や双極II型よりも軽度ですが、持続的に気分の波があるため、安定した生活を送ることが難しい場合があります。

双極性障害の主な症状

双極性障害の症状は、躁(軽躁)状態とうつ状態で大きく異なります。

躁状態・軽躁状態の主な症状

  • 異常に高揚した気分、過度の楽観性
  • 自尊心や自信の肥大、万能感
  • 睡眠欲求の減少(数時間の睡眠でも元気でいられる)
  • 普段より早口になる、止まらずに話し続ける
  • 考えが次々と浮かぶ(思考奔逸)
  • 注意散漫、集中力の低下
  • 目標志向性の活動や衝動性の増加
  • リスクの高い行動(浪費、無計画な投資、性的無分別など)

軽躁状態は躁状態よりも症状は軽度ですが、パターンは類似しています。

うつ状態の主な症状

  • 持続的な抑うつ気分、悲しさや空虚感
  • 以前は楽しめていた活動への興味や喜びの喪失
  • 睡眠障害(不眠または過眠)
  • 食欲の変化、体重の増減
  • 疲労感、エネルギーの低下
  • 集中力や決断力の低下
  • 無価値感や過剰な罪悪感
  • 自殺念慮や死についての反復的な考え

双極性障害の症状は個人によって大きく異なり、同じ人でも時期によって症状のパターンが変化することがあります。また、躁状態とうつ状態が混在する「混合状態」を経験する人もいます。

双極性障害の早期発見の重要性

双極性障害は発症から適切な診断までに平均8-10年かかるとされており、早期発見と適切な治療の開始が重要です。特に初回エピソードがうつ状態で始まることが多いため、うつ病と誤診されるケースも少なくありません。

以下のような場合は、双極性障害の可能性を考慮した専門医の診察が望ましいでしょう。

  • 家族歴に双極性障害がある
  • うつ症状が若年(10代後半〜20代前半)で始まった
  • 抗うつ薬で症状が悪化した経験がある
  • 短期間で気分が急激に変化する
  • エネルギッシュな期間と憂うつな期間を繰り返している
  • うつ状態の間でも過活動や高揚した気分の期間がある

早期発見と適切な治療により、症状の管理が容易になり、再発や合併症のリスクを軽減できる可能性が高まります。

双極性障害の原因と危険因子

双極性障害の正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、複数の要因が関与していると考えられています。

遺伝的要因

双極性障害には強い遺伝的要素があります。家族の中で双極性障害の診断を受けた人がいる場合、その他の家族メンバーの発症リスクは高まります。特に一卵性双生児では、片方が双極性障害を発症した場合、もう片方も発症するリスクが約40-70%に達するという研究結果もあります。

脳の構造と機能

脳画像研究では、双極性障害を持つ人と持たない人との間で脳の構造や機能に違いがあることが示されています。特に感情調節に関わる脳領域(辺縁系)や衝動制御に関わる前頭前皮質に差異が見られることがあります。

神経伝達物質の不均衡

セロトニン、ドーパミン、ノルエピネフリンなどの神経伝達物質のバランスの乱れが、気分障害の発症に関連していると考えられています。これらの化学物質は気分、エネルギーレベル、認知機能の調節に重要な役割を果たしています。

環境的トリガー

遺伝的素因を持つ人では、以下のような環境要因が双極性障害の発症や再発のきっかけとなる可能性があります。

  • 重度のストレスや心理的トラウマ
  • 大きな生活の変化(就職、転職、結婚、離婚など)
  • 睡眠パターンの大幅な乱れ
  • 薬物やアルコールの乱用
  • 季節の変化(特に春や秋)

これらの要因が複雑に絡み合って、双極性障害の発症と経過に影響を与えると考えられています。

双極性障害の診断

双極性障害の診断は、詳細な臨床面接、症状評価、病歴の確認、場合によっては心理検査などを通じて行われます。日本では主にICD-10(国際疾病分類第10版)の診断基準が用いられますが、研究や臨床現場ではDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)の基準も参考にされています。

診断プロセスでは以下の点が重要視されます。

  • 躁状態・軽躁状態・うつ状態のエピソードの有無と持続期間
  • 症状の重症度と機能障害の程度
  • 症状の時系列パターン
  • 他の精神疾患や身体疾患、薬物の影響の除外

正確な診断のためには、患者本人だけでなく、可能であれば家族や近しい人からも情報を得ることが重要です。双極性障害は気分の変動が特徴であるため、患者自身が躁状態やその影響を適切に認識できていないことがあるためです。

双極性障害の治療アプローチ

双極性障害の治療は通常、薬物療法、心理療法、生活習慣の改善を組み合わせた包括的なアプローチで行われます。長期的な管理が必要な慢性疾患であり、症状が安定した後も継続的な治療が推奨されています。

薬物療法

双極性障害の薬物療法では、主に以下の種類の薬剤が使用されます。

  1. 気分安定薬
    リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピン、ラモトリギンなどが含まれます。これらは躁状態とうつ状態の両方を抑制し、気分の安定を図る基本的な治療薬です。特にリチウムは長期的な再発予防効果が確立されています。
  2. 抗精神病薬
    オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、アリピプラゾールなどの第二世代(非定型)抗精神病薬は、急性期の躁状態の治療や維持療法に用いられます。一部は気分安定作用も有します。
  3. 抗うつ薬
    双極性障害におけるうつ状態の治療には、抗うつ薬の単独使用は一般的に推奨されていません。気分安定薬または抗精神病薬との併用で慎重に使用されることがあります。抗うつ薬の使用により躁転(うつ状態から躁状態への急激な変化)のリスクが高まる可能性があるためです。薬物療法は個々の症状パターン、重症度、過去の治療反応、副作用プロファイルなどを考慮して個別化されます。効果が現れるまでに時間がかかることがあり、最適な治療法を見つけるまでには調整が必要な場合もあります。

心理療法

薬物療法と並行して行われる心理療法は、症状管理、再発予防、生活の質の向上に役立ちます。

  1. 認知行動療法(CBT)
    否定的な思考パターンを識別し、より健全で現実的な思考法を学びます。双極性障害特有の認知の歪みに対処し、症状の早期警告サインの認識を助けます。
  2. 対人関係・社会リズム療法(IPSRT)
    社会的関係と日常生活のリズム(睡眠、食事、活動など)の安定を図ります。双極性障害では生体リズムの乱れが症状悪化につながることが知られており、規則正しい生活習慣の確立が重要です。
  3. 家族焦点化療法
    家族全体を治療に巻き込み、双極性障害についての教育、コミュニケーション改善、問題解決スキルの強化を行います。家族のサポートは治療成功の重要な要素です。
  4. 心理教育
    患者とその家族に疾患についての正確な情報を提供し、症状の自己管理能力を高めます。早期警告サインの認識と対処計画の策定が含まれます。

生活習慣の改善とセルフケア

日常生活でのセルフケアは症状管理と再発予防に不可欠です。

  1. 規則正しい睡眠習慣の維持
    睡眠の乱れは双極性障害の症状悪化のトリガーとなりやすいため、就寝・起床時間の一貫性が重要です。
  2. ストレス管理
    瞑想、深呼吸、ヨガなどのリラクゼーション技法の習得が役立ちます。
  3. 定期的な運動
    適度な運動は気分改善、ストレス軽減、睡眠の質向上に効果的です。
  4. バランスの取れた食事
    栄養バランスの良い食事と規則正しい食事時間が心身の健康をサポートします。
  5. アルコールと薬物の回避
    これらは気分の不安定さを増長し、薬物療法の効果を妨げる可能性があります。
  6. 気分日記の記録
    気分、活動、睡眠、ストレス要因などを記録することで、症状パターンや引き金を特定するのに役立ちます。

日常生活での対処法

双極性障害は慢性疾患ですが、適切な治療と自己管理により、多くの人が充実した生活を送ることが可能です。以下は日常生活での実践的なヒントです。

早期警告サインの認識

躁状態やうつ状態の前兆を早期に認識することで、悪化を防ぐための対策を講じることができます。

躁状態の警告サイン

  • 睡眠時間の減少にも関わらず疲労感がない
  • 話し方や考え方のスピードが速くなる
  • 普段より社交的になる、多弁になる
  • 普段はしないような計画や活動に熱中する
  • 金銭的な浪費が増える

うつ状態の警告サイン

  • 睡眠パターンの変化(不眠または過眠)
  • 社会的引きこもり、活動への関心低下
  • エネルギーの低下、疲労感の増加
  • 否定的な思考の増加
  • 集中力や決断力の低下

これらのサインに気づいたら、担当医に連絡し、対処計画に従うことが重要です。

サポートネットワークの構築

双極性障害の管理には、強力なサポートシステムが不可欠です。

  • 信頼できる家族や友人に症状や治療について理解してもらう
  • 同じ経験を持つ人々との交流(サポートグループなど)
  • 精神保健の専門家(精神科医、心理士、カウンセラーなど)との定期的な連携
  • 必要に応じて職場や学校での合理的配慮を求める

ストレス管理と引き金の回避

ストレスは双極性障害の症状を悪化させる主要な要因です。

  • 過度な責任やプレッシャーを避け、現実的な目標設定を心がける
  • 「ノー」と言うことを学び、自分の限界を認識する
  • 定期的なリラクゼーション活動を日課に組み込む
  • 睡眠不足や過度の刺激を避ける
  • 大きな生活の変化に直面する際は、事前に対処計画を立てる

まとめ

双極性障害は複雑で挑戦的な疾患ですが、科学の進歩により理解と治療法は着実に改善しています。早期発見、適切な治療、そして継続的な自己管理により、多くの人々がこの障害を持ちながらも充実した人生を送ることが可能です。
重要なのは、双極性障害は治療可能な疾患であり、診断は人生の終わりではなく、むしろ回復への第一歩であるということです。正確な情報、適切な治療、そして周囲のサポートがあれば、双極性障害の症状をコントロールし、自分らしい人生を取り戻すことができます。

医療機関を受診する
タイミング

以下のような場合は、専門医への相談を検討してください。

  • 気分の著しい高揚や沈鬱が日常生活に支障をきたしている
  • 家族や友人が行動の変化を懸念している
  • 自殺念慮や自傷行為の考えがある
  • 危険を伴う衝動的行動(無謀な運転、過度の浪費など)が制御できない
  • 現在の治療で症状が十分に管理できていない、または副作用が問題になっている

早期介入ほど効果的な治療につながることを忘れないでください。もし心配なことがあれば、遠慮なく当院にご相談ください。あなたの状況に合わせた適切なサポートを提供します。

参考文献

  1. World Health Organization (WHO). (2023). Bipolar disorder.
  2. Substance Abuse and Mental Health Services Administration (SAMHSA). (2022). What is Bipolar Disorder?
  3. National Institutes of Health (NIH). (2023). Bipolar Disorder (Manic Depression): Symptoms & Treatment.
  4. Bipolar disorders in ICD-11: current status and strengths. (2022). World Psychiatry.
  5. American Psychiatric Association. (2013). DSM-5 Diagnostic Codes for Bipolar Disorder.

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