2026年3月09日

会社から「まず受診して」と言われたら何をする?
心療内科・精神科・産業医の違いを整理する
- 「会社から受診を勧められた」ときは、まず心療内科・精神科(主治医)を受診するのが基本
- 産業医は会社側の立場で動く職種であり、主治医とは役割が根本的に異なる
- 診断書を発行できるのは主治医だけ。産業医は通常、診断書を作成しない
- 初診前に「いつから・どんな症状・職場での背景」をメモしておくとスムーズ
「体調が悪そうだから、一度病院へ行ってみて」「産業医に相談してから」——上司や人事からこう言われたとき、どこへ、どんな順番で行けばよいのか迷う方は少なくありません。心療内科、精神科、産業医という言葉は聞いたことがあっても、それぞれが何をするところなのかはわかりにくいものです。この記事では、産業医の資格も持つ精神科医の立場から、3つの違いと受診の流れをわかりやすく解説します。
まず大前提として、「主治医」になれるのは心療内科・精神科の医師だけです。診断を行い、治療方針を決め、必要に応じて診断書を作成するのは、外来を担当する医師(主治医)の役割です。
▲ 心療内科・精神科(主治医)と産業医は、立場も役割も異なります
| 区分 | 誰の立場か | 主な役割 | 診断書作成 |
|---|---|---|---|
| 心療内科・精神科 (主治医) |
患者(あなた)の立場 | 診断・治療・薬の処方・診断書作成 | ◎ 作成できる |
| 産業医 | 会社(事業者)の立場 | 就業可否の意見・職場環境の改善提案・面談 | △ 通常は作成しない |
心療内科と精神科はどちらも「こころの不調」を診る科ですが、歴史的には異なる領域から発展しました。現在の外来診療では、不眠・不安・抑うつ・適応障害・パニック発作などはどちらでも対応できることが多く、クリニックによって得意領域が異なります。「どちらへ行けばいいかわからない」という場合は、まずかかりやすい方を選んで構いません。
産業医は会社(事業者)と契約している医師で、会社全体の健康管理・労働環境の改善が主な仕事です。産業医面談は「会社の指示で動く」面があり、面談内容の一部は会社の人事・上司に共有されることがあります。治療の相談や診断書の発行は産業医の業務外であることがほとんどです。
「産業医に相談すれば診断書が出る」は誤りです。診断書は主治医(心療内科・精神科)が発行します。産業医は就業に関する「意見書」を出しますが、これは診断書とは別のものです。
会社から受診を勧められた場合、基本的な流れは次のとおりです。
- 心療内科・精神科を受診する(主治医を持つ)
まず外来で診察を受け、医師に現在の状態を話します。必要に応じて診断名や治療方針が示されます。 - 会社の求めに応じて産業医面談を受ける
主治医の判断をもとに、会社側の産業医と就業について話し合います。このとき「主治医の意見」が参考にされます。 - 休職・復職などの判断は主治医と産業医の両方の意見を参考に
最終的な就業判断は会社が行いますが、主治医の診断書と産業医の意見書が重要な材料になります。
▲ まず「主治医(外来クリニック)」を受診し、その後産業医面談に進むのが基本的な流れ
初診の時間は限られています。以下を事前にメモしておくと、医師に状況が伝わりやすく、診察がスムーズになります。
- いつ頃から、どんな症状が出ているか(不眠・食欲低下・気分の落ち込みなど)
- 職場で起きた出来事のうち、不調に関係しそうなこと(異動・業務量の変化・人間関係など)
- 会社から「受診して」と言われた経緯(任意か業務命令か)
- 現在飲んでいる薬(内科などで処方されているものも含めて)
診察で話した内容は、原則として会社に伝わりません。ただし、休職・復職に際して診断書や主治医意見書を提出する場合は、その範囲で情報が共有されます。何を会社に伝えるかは、受診後に医師と一緒に考えることができます。
▲ 「病気かどうかわからない」という状態でも相談していただけます
会社から勧められても、「大げさかな」「薬は飲みたくない」と受診をためらう方は多くいます。しかし、心療内科・精神科は「病気の人だけが行く場所」ではありません。「眠れない」「会社へ行く足が重い」「何もやる気が出ない」という状態が続いているなら、それは十分に相談に来ていただける理由になります。
初診で「まだ治療は必要ない」という判断になることもありますし、生活上のアドバイスだけで状態が改善する方もいます。まず話を聞いてもらうために来院することを、ためらわないでいただければと思います。
- 会社から受診を勧められたら、最初に行くべきは心療内科・精神科(外来クリニック)
- 産業医面談はその後で行うことが多く、診断書を発行できるのも主治医だけ
- 初診前には「いつから・どんな症状・職場での背景」をざっくりメモしておくと有効
- 「受診するほどじゃないかも」と感じていても、まず話を聞いてもらうことから始めて大丈夫
受診に迷いがある方も、まずWEBやLINEからお気軽にご連絡ください。あなたの状況を一緒に整理するところから始めます。
知識を得ることは、最初の一歩です。次のステップとして、あなたに合った方法を一緒に考えてみませんか。
精神保健指定医
日本医師会認定産業医
産業保健法務主任者(メンタルヘルス法務主任者)
健康経営アドバイザー
大学病院から民間病院まで幅広い臨床経験を持つ。産業医として企業の健康管理にも携わり、「働く人のメンタルヘルス」を臨床と産業の両面から支えている。「薬を出して終わり」ではなく、患者が自分の力で歩き出せる状態を目指す「伴走型」の診療を実践。
- 厚生労働省「産業医について」(産業医の職務範囲に関する公式ガイドライン)
- 厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
- 日本精神神経学会「精神科・心療内科の受診について」
- 医療広告ガイドライン(平成30年厚生労働省告示)