2026年1月27日

不安発作かな?パニックの応急対応と受診の目安──今すぐできる対処法と予防策
突然、激しい動悸、息苦しさ、めまいに襲われ、「このまま死ぬのではないか」という恐怖を感じる──それがパニック発作です。
五反田ストレスケアクリニックでは、毎日のようにパニック発作で苦しむ患者さんを診ています。多くの方が「救急車を呼んだけど異常なしと言われた」「心臓に問題はないと言われたが不安が消えない」と訴えます。
パニック発作は命に関わるものではありません。どんなに苦しくても、発作自体で死ぬことはありません。ただし、非常に強い恐怖を伴うため、適切な対処と治療が必要です。
この記事では、パニック発作が起きた時の今すぐできる応急対応、救急車を呼ぶべきかの判断基準、そして受診のタイミングを、最新のエビデンスに基づいて詳しく解説します。
パニック発作は、強い恐怖や不安とともに、身体症状が突然出現する状態です。DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)では、以下の13症状のうち4つ以上が同時に現れた場合、パニック発作と診断されます。
13の症状チェックリスト
身体症状(9項目)
- ✓ 動悸、心拍数の増加(ドキドキする、脈が速い)
- ✓ 発汗(冷や汗、全身の汗)
- ✓ 身震い、震え(手足が震える)
- ✓ 息切れ、息苦しさ(呼吸が浅い、窒息感)
- ✓ 窒息感(喉が詰まる感じ)
- ✓ 胸痛、胸部不快感(胸が締め付けられる)
- ✓ 吐き気、腹部不快感
- ✓ めまい、ふらつき、気が遠くなる感じ
- ✓ 寒気、熱感(寒くなったり熱くなったり)
精神症状(4項目)
- ✓ 異常感覚(しびれ、うずき)
- ✓ 現実感消失(現実ではない感じ)、離人感(自分が自分でない感じ)
- ✓ コントロールを失う恐怖、気が狂う恐怖
- ✓ 死ぬことへの恐怖(「このまま死ぬのでは」)
- 急激な発症: 10分以内にピークに達する
- 持続時間: 通常20〜30分で自然に収まる(長くても1時間程度)
- 予測不可能: いつ起こるか分からない(特定の状況で起こることもある)
パニック発作では、脳の扁桃体が過剰反応し、自律神経を介して全身に症状が現れます
パニック発作と心臓発作(心筋梗塞)は症状が似ているため、初めての発作の場合は救急車を呼んでも構いません。命に関わる病気を除外することが最優先です。
救急車を呼ぶべき症状(心臓発作の可能性)
⚠️ すぐに119番を
- 胸痛が15分以上続く(締め付けられる、圧迫される痛み)
- 痛みが左肩・腕・顎に広がる
- 冷や汗と強い吐き気を伴う
- 意識が朦朧とする、失神する
- 呼吸困難が悪化し続ける(横になれない)
- 心臓病、高血圧、糖尿病の既往がある
パニック発作と心臓発作の違い(参考)
| パニック発作の特徴 | 心臓発作(心筋梗塞)の特徴 |
|---|---|
| 10分以内にピークに達する | 徐々に悪化していく |
| 20〜30分で自然に治まる | 時間とともに悪化する |
| 若年者(20〜40代)に多い傾向 | 中高年(50代以上)に多い傾向 |
| 特定の状況で起こることがある(電車、会議など) | 状況とは無関係 |
| 過去にも同様の発作がある | 初めての経験 |
⚠️ 重要な注意
上記は傾向であり、50歳未満でもパニック障害の患者さんは心筋梗塞のリスクが上昇するという大規模研究があります[1]。年齢だけで「心臓は大丈夫」と判断せず、初回発作や心臓病のリスク因子がある場合は必ず医療機関を受診してください。
パニック発作の多くは過呼吸(呼吸が速く浅くなる)を伴います。呼吸をゆっくり深くすることで、自律神経を整え、症状を和らげることができます。
緩徐呼吸法(スローブリージング)は、パニック障害患者を対象としたランダム化比較試験で有効性が示されています[2]。以下は、その一例としての「4-7-8呼吸法」です。
4-7-8呼吸法:吐く時間を長くすることで副交感神経が活性化します
4-7-8呼吸法のやり方(緩徐呼吸の一例)
秒数を正確に守る必要はありません。大切なのは「吸う時間」より「吐く時間」を長くすることです。これにより副交感神経が活性化し、リラックス状態に導かれます。
⚠️ 紙袋呼吸(ペーパーバッグ法)は推奨されません
かつては過呼吸に対して紙袋を口に当てる方法が用いられていましたが、低酸素血症(酸素不足)や意識消失を引き起こすリスクがあるため、現在は推奨されていません[3]。座るか横になって、上記の緩徐呼吸法を行いましょう。
パニック発作が起きた時、以下のステップで対処しましょう。
1. 安全な場所に移動する
運転中であれば車を停め、電車なら次の駅で降りるなど、まず安全を確保します。人混みを避け、静かな場所へ。
2. 「これはパニック発作だ」と自分に言い聞かせる
「死ぬわけではない」「20分もすれば治まる」と心の中で繰り返します。恐怖を認めつつ、冷静な部分を保ちましょう。
3. 緩徐呼吸法を実践する
上記の呼吸法をゆっくり行います。呼吸に意識を向けることで、恐怖から注意をそらす効果もあります。
4. グラウンディング(現実感を取り戻す)
「5-4-3-2-1法」が効果的です。五感を使って「今ここ」に意識を戻します:
- 5つの「見えるもの」を探す(時計、椅子、窓など)
- 4つの「触れるもの」を感じる(床、服、壁など)
- 3つの「聞こえる音」を見つける(車の音、風の音など)
- 2つの「匂い」を意識する(コーヒー、香水など)
- 1つの「味」を感じる(口の中の味、飴など)
5. 収まるまで待つ(無理に動かない)
発作は必ず治まります。焦らず、その場で休みましょう。水を飲む、首筋を冷やすなども効果的です。
パニック発作を繰り返す場合、パニック障害に移行する可能性があります。以下に当てはまる場合は、精神科・心療内科の受診をお勧めします。
受診すべきサイン
- 発作が2回以上起きている
- 「また起こるのでは」という不安が1ヶ月以上続いている(予期不安)
- 発作を恐れて、特定の場所を避けるようになった(広場恐怖)
- 電車、会議、人混みなど、特定の状況で必ず起こる
- 日常生活に支障が出ている(外出できない、仕事に行けないなど)
診察では何をするの?
1. 問診
- 発作の頻度、症状、きっかけ
- 予期不安、広場恐怖の有無
- 日常生活への影響
- 他の疾患(甲状腺機能亢進症、不整脈など)の除外
2. 治療方針の相談
パニック障害の治療は、主に以下の2つです:
- 薬物療法: SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、抗不安薬
- 認知行動療法: 発作への恐怖を和らげ、回避行動を減らす
どちらか一方、または両方を組み合わせて治療します。症状や生活状況に合わせて、医師と相談しながら進めていきます。
パニック発作は、ストレスや生活習慣の乱れで起こりやすくなります。以下の予防策を日常生活に取り入れましょう。
日常の生活習慣を整えることが、パニック発作の予防につながります
予防策7つ
1. カフェイン・アルコールを控える
カフェインは不安を増幅させます。メタ分析によると、高用量のカフェイン(約480mg、コーヒー約5杯相当)はパニック障害患者の約半数に発作を誘発することが示されています[4]。エナジードリンクにも注意が必要です。アルコールは一時的にリラックスさせますが、反跳性の不安を引き起こします。
2. 規則正しい睡眠
睡眠不足は自律神経を乱し、発作を起こしやすくします。毎日同じ時間に寝起きする習慣を。
3. 適度な運動
週3回、30分程度の有酸素運動(ウォーキング、ジョギング)が効果的です。運動は不安を軽減し、ストレス発散になります。
4. 緩徐呼吸の習慣化
発作時だけでなく、日頃から緩徐呼吸法を練習しておくと、いざという時にスムーズにできます。1日5〜10分の練習がおすすめです。
5. ストレスマネジメント
瞑想、ヨガ、趣味の時間など、リラックスできる時間を意識的に作りましょう。
6. 発作記録をつける(専門家と一緒に)
いつ、どこで、何をしていた時に発作が起きたかを記録すると、パターンが見えてきます。ただし、過度な自己モニタリングは予期不安を増悪させることもあるため、主治医や心理士と相談しながら行うことをお勧めします。
7. 「安心カード」を持ち歩く
「これはパニック発作。20分で治まる。死なない」と書いたカードを財布に入れておくと、発作時に心の支えになります。
- Walters K, et al. Panic disorder and risk of new onset coronary heart disease, acute myocardial infarction, and cardiac mortality: cohort study using the general practice research database. Eur Heart J. 2008;29(24):2981-8.
DOI: 10.1093/eurheartj/ehn477 - Herhaus B, et al. Effect of a slow-paced breathing with heart rate variability biofeedback intervention on pro-inflammatory cytokines in individuals with panic disorder – A randomized controlled trial. J Affect Disord. 2023;326:132-138.
DOI: 10.1016/j.jad.2023.01.091 - Kobayashi M, et al. Management of post-hyperventilation apnea during dental treatment under monitored anesthesia care with propofol. Biopsychosoc Med. 2014;8(1):26.
DOI: 10.1186/s13030-014-0026-9 - Klevebrant L, Frick A. Effects of caffeine on anxiety and panic attacks in patients with panic disorder: A systematic review and meta-analysis. Gen Hosp Psychiatry. 2022;74:22-31.
DOI: 10.1016/j.genhosppsych.2021.11.005 - American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (5th ed.). Arlington, VA: American Psychiatric Publishing; 2013.
監修・執筆者
片山 渚 医師
五反田ストレスケアクリニック院長
精神保健指定医
日本医師会認定産業医
産業保健法務主任者(メンタルヘルス法務主任者)
健康経営アドバイザー
大学病院から民間病院まで幅広い臨床経験を活かし、患者さんが安心して治療を継続できるよう、わかりやすい情報提供を心がけています。
⚠️ 免責事項
この記事は一般的な医学情報を提供するものであり、個別の診断や治療の代替となるものではありません。胸痛が続く、意識が朦朧とするなどの症状がある場合は、すぐに救急車を呼んでください。パニック発作と似た症状の病気(心臓疾患、甲状腺疾患など)もあるため、必ず医療機関での診察を受けてください。