2026年1月19日

傷病手当金・医療費の基礎──精神科でも使える?経済的不安を軽減する制度完全ガイド
休職する不安、一人で抱えていませんか?
- 傷病手当金:給与の約2/3が最長1年6ヶ月支給(2022年から通算化)
- 自立支援医療:医療費の自己負担を3割→1割に軽減
- その他の制度:高額療養費、障害年金、精神障害者保健福祉手帳など
「休職したら収入がなくなる」「医療費が払えるか心配」「治療を続けたいけど経済的に厳しい」──精神疾患で休職や治療が必要になった時、経済的な不安は症状をさらに悪化させる大きな要因です。
五反田ストレスケアクリニックでは、多くの患者さんから「もっと早く知っていれば」という声を聞きます。実は、精神疾患でも利用できる経済支援制度がいくつも用意されています。
この記事では、精神科医・産業医として多くの患者さんをサポートしてきた経験から、実際に使える制度を分かりやすく解説します。
傷病手当金は、病気やケガで働けなくなった時に、健康保険から支給される所得補償制度です。うつ病・適応障害・パニック障害などの精神疾患も対象になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支給額 | 標準報酬日額の2/3(およそ給与の約67%) |
| 支給期間 | 通算して最長1年6ヶ月(2022年1月〜通算化) |
| 対象疾患 | すべての病気・ケガ(精神疾患も含む) |
| 対象者 | 健康保険(協会けんぽ、組合健保)加入の会社員 ※国民健康保険は原則対象外 |
| 待機期間 | 連続して3日間休んだ後、4日目から支給 |
2022年1月の法改正ポイント
支給期間が「起算して1年6ヶ月」から「通算して1年6ヶ月」に変更されました。途中で復職した期間があっても、その期間は支給日数にカウントされないため、実質的に受給できる期間が長くなりました。
月給30万円の場合:
- 1日あたり:約6,667円
- 1ヶ月あたり:約20万円
※傷病手当金は非課税のため、手取りとの差は小さくなります
傷病手当金を受給するには、以下の4つの条件すべてを満たす必要があります。
計算式
1日あたりの支給額 = 支給開始日以前12ヶ月間の標準報酬月額の平均 ÷ 30日 × 2/3
※加入期間が12ヶ月未満の場合、協会けんぽでは支給開始日が2025年4月1日以降なら32万円が上限基礎額となります。
傷病手当金の申請は、会社の総務・人事部門と健康保険組合(または協会けんぽ)とのやり取りが必要です。
STEP 1:会社の人事・総務に相談する
申請書類(健康保険傷病手当金支給申請書)をもらい、会社側で記入が必要な箇所を確認します。
STEP 2:医師に意見書を書いてもらう
申請書には「療養担当者(医師)の意見書」欄があります。当院でも記入を承っています。
STEP 3:申請書を提出する
1ヶ月ごとに申請するのが一般的です。会社経由で健康保険組合に提出します。時効は労務不能だった日の翌日から2年間です。
STEP 4:支給決定・入金
審査期間は申請から1〜2ヶ月程度。協会けんぽは受付後原則10営業日で支払いとなります。
必須書類
- 健康保険傷病手当金支給申請書
- 医師の意見書(申請書内に記入欄あり)
- 会社の証明(申請書内に記入欄あり)
自立支援医療制度は、継続的な精神科通院が必要な方の医療費負担を軽減する制度です。通常3割負担の医療費が1割負担になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 自己負担額 | 医療費の1割(3割→1割に軽減) |
| 月額上限 | 所得に応じて0円〜20,000円(下記参照) |
| 対象疾患 | 統合失調症、うつ病、躁うつ病、不安障害、てんかん、認知症など |
| 対象医療 | 指定医療機関での通院・薬局(入院は対象外) |
| 有効期間 | 1年間(毎年更新が必要) |
| 所得区分 | 基準 | 上限額 |
|---|---|---|
| 生活保護 | 生活保護世帯 | 0円 |
| 低所得1 | 市民税非課税・本人収入80万9千円以下 | 2,500円 |
| 低所得2 | 市民税非課税・本人収入80万9千円超 | 5,000円 |
| 中間所得1 | 市民税所得割3万3千円未満 | 5,000円※ |
| 中間所得2 | 市民税所得割3万3千円以上23万5千円未満 | 10,000円※ |
| 一定所得以上 | 市民税所得割23万5千円以上 | 20,000円※ |
※「重度かつ継続」に該当する場合の上限額。該当しない場合は医療保険の自己負担限度額が適用されます。
※一定所得以上の経過的特例は令和9年3月まで延長されています。
例:月の医療費が15,000円の場合
- 通常(3割負担):4,500円
- 自立支援医療(1割負担):1,500円
- 月3,000円の節約!
- 主治医に診断書を依頼
自立支援医療用の診断書を書いてもらいます(当院でも作成可) - 必要書類を揃える
診断書、健康保険証(またはマイナンバーカード)、世帯の所得証明書類など - 市区町村の窓口に申請
お住まいの障害福祉課・保健福祉課などに提出 - 受給者証の交付
審査後(約1〜2ヶ月)、受給者証が郵送されます
傷病手当金・自立支援医療以外にも、状況に応じて利用できる制度があります。
1ヶ月の医療費が高額になった場合、自己負担限度額を超えた分が払い戻される制度です。
- 対象:すべての健康保険加入者
- 限度額例:年収約370〜770万円の場合、月約8万円
- 申請先:加入している健康保険組合
精神疾患により長期間(初診日から1年6ヶ月以上)日常生活や労働に著しい支障がある場合、受給できる可能性があります。
- 種類:障害基礎年金、障害厚生年金
- 支給額:障害等級により異なる(2級で月約6.5万円〜)
- 申請先:年金事務所
精神疾患により長期間(6ヶ月以上)生活に制限がある場合に取得できます。
- メリット:税金の控除、公共交通機関の割引、携帯電話料金の割引など
- 等級:1級〜3級(障害の程度により決定)
- 申請先:市区町村の障害福祉課
うつ病の基本的な症状、診断基準、治療法について精神科医が解説します。
パニック障害、社交不安障害など、不安障害の種類と治療法を解説します。
ストレス因への反応として起こる適応障害の特徴と対処法を解説します。
診断書の取得から休職手続き、復職までの流れを詳しく解説します。
片山 渚 医師
五反田ストレスケアクリニック院長
精神保健指定医
日本医師会認定産業医
産業保健法務主任者(メンタルヘルス法務主任者)
健康経営アドバイザー
大学病院から民間病院まで幅広い臨床経験を活かし、患者さんが安心して治療を継続できるよう、わかりやすい情報提供を心がけています。
免責事項:この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法律・税務・社会保険の相談には応じられません。制度の詳細や最新情報は、各健康保険組合、市区町村、年金事務所などにお問い合わせください。傷病手当金の支給可否は、健康保険組合の審査により決定されます。