2026年1月12日

「抗うつ薬や睡眠薬を飲み始めたけど、副作用が心配」「いつまで飲み続けなければならないの?」「やめたら悪化するのでは?」──こうした不安を抱えている方は非常に多いです。
この記事では薬物療法を始める際に必ず「副作用」「やめ時」「減らし方」について詳しく説明しています。なぜなら、正しい知識があれば、不安は大きく軽減されるからです。
精神科の薬は「一生飲み続けるもの」ではありません。多くの場合、症状が安定したら徐々に減量し、最終的には中止できます(もちろん例外はあります)。ただし、「自己判断での中断」は再発リスクが高いため、必ず医師と相談しながら進めることが重要です。
この記事では、主にSSRI(抗うつ薬)と睡眠薬の副作用、正しい減薬・中止の方法を、精神科医の視点から詳しく解説します。
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、うつ病や不安障害の第一選択薬として広く使われています。代表的な薬剤には、レクサプロ、ジェイゾロフト、パキシルなどがあります。
SSRIの副作用一覧と対処法
| 副作用 | 出現時期 | 症状 | 対処法 |
|---|---|---|---|
| 吐き気・胃部不快感 | 開始1〜2週間 | ムカムカする、食欲低下 | ・食後に服用 ・少量から開始 ・制吐剤の併用 ※通常2週間で自然に改善 |
| 眠気・だるさ | 開始直後〜 | 日中の眠気、倦怠感 | ・就寝前に服用 ・運転は控える ・服用時間の調整 |
| 不眠・焦燥感 | 開始1〜2週間 | 寝つきが悪い、そわそわする | ・朝に服用 ・睡眠薬の併用 ※薬剤の変更も検討 |
| 性機能障害 | 数週間後〜 | 性欲低下、勃起障害、オルガズム障害 | ・医師に相談 ・薬剤変更 ・減量を検討 |
| 体重増加 | 数ヶ月後〜 | 食欲増加、2〜5kg程度の増加 | ・食事管理 ・運動習慣 ・薬剤変更の検討 |
⚠️ すぐに医師に連絡すべき副作用
- 激しい焦燥感、衝動性の増加(特に若年者)
- セロトニン症候群:発熱、発汗、振戦、筋硬直、意識障害
- 低ナトリウム血症:頭痛、吐き気、けいれん(高齢者に多い)
- アレルギー反応:発疹、じんましん、呼吸困難
これらの症状が出た場合は、服用を中止し、すぐに医療機関に連絡してください。
💡 副作用が出にくくするコツ
- 少量から開始:通常量の半分から始める
- ゆっくり増量:1〜2週間ごとに少しずつ増やす
- 服用時間を工夫:眠気が出る場合は就寝前、不眠が出る場合は朝
- 継続する:軽い副作用は2週間で自然に改善することが多い
睡眠薬は大きく分けて「ベンゾジアゼピン系」「非ベンゾジアゼピン系」「オレキシン受容体拮抗薬」「メラトニン受容体作動薬」の4種類があります。それぞれ副作用の特徴が異なります。
睡眠薬の副作用一覧と対処法
| 副作用 | よく起こる薬 | 症状 | 対処法 |
|---|---|---|---|
| 翌朝への持ち越し | 長時間型 (ベンザリンなど) |
朝起きられない、日中の眠気 | ・短時間型への変更 ・服用時間を早める ・減量 |
| 記憶障害・健忘 | ベンゾジアゼピン系全般 | 服用後の記憶がない、物忘れ | ・服用後すぐ就寝 ・非ベンゾ系への変更 ・減量 |
| 筋弛緩作用 | ベンゾジアゼピン系 | ふらつき、転倒リスク増加 | ・夜間のトイレに注意 ・非ベンゾ系への変更 ※特に高齢者は要注意 |
| 依存性 | ベンゾジアゼピン系 (特に短時間型) |
やめられない、量が増える | ・漸減法で減量 ・依存性の低い薬への変更 ・生活習慣の改善 |
| 悪夢・異常行動 | オレキシン受容体拮抗薬 (ベルソムラなど) |
生々しい夢、夢遊病様行動 | ・薬剤変更 ・減量 ・服用時間の調整 |
✅ 比較的副作用が少ない睡眠薬
- メラトニン受容体作動薬(ロゼレム):依存性なし、自然な眠り
- オレキシン受容体拮抗薬(ベルソムラ、デエビゴなど):依存性が低い
- 非ベンゾジアゼピン系(マイスリーなど):筋弛緩作用が少ない
ただし、個人差があるため「自分に合った薬」を医師と相談して見つけることが大切です。
「いつまで薬を飲み続ければいいのか?」という質問は非常に多いです。一般的に、以下の3つの条件が揃った時が減薬・中止を検討するタイミングです。
薬を減らす・やめる際には、「漸減法」という方法が基本です。急に中断すると、離脱症状や再発のリスクが高まります。
減薬の基本ステップ
STEP 1:まずは1種類ずつ減らす
複数の薬を服用している場合、一度に複数を減らさないこと。まずは1種類から始め、問題なければ次の薬へ進みます。
STEP 2:少しずつ量を減らす
目安:現在の量の10〜25%ずつ
- 例:10mgを飲んでいる → 7.5mgに減量
- 1〜2週間様子を見て、問題なければさらに減量
- 症状が再燃したら、減量ペースを緩めるor一旦戻す
STEP 3:減薬中の症状を記録する
以下の項目を記録し、診察時に医師に報告しましょう:
- 睡眠の質(寝つき、中途覚醒、早朝覚醒)
- 気分の変化(落ち込み、不安、イライラ)
- 身体症状(頭痛、めまい、吐き気など)
- 日常生活への影響(仕事、家事、人間関係)
減薬ペースの目安
| 薬の種類 | 減量ペース | 中止までの期間目安 |
|---|---|---|
| SSRI/SNRI | 2〜4週間ごとに10〜25%ずつ | 2〜6ヶ月 |
| ベンゾジアゼピン系睡眠薬 | 1〜2週間ごとに10〜25%ずつ | 2〜6ヶ月(長期服用例は1年以上) |
| 非ベンゾ系睡眠薬 | 1〜2週間ごとに減量 | 1〜3ヶ月 |
| オレキシン・メラトニン系 | 比較的早いペースでOK | 1〜2ヶ月 |
パキシル(パロキセチン)は特に離脱症状が出やすい薬です。減量は非常にゆっくり(10%ずつ、4週間ごと程度)進める必要があります。自己判断での中断は避けてください。
離脱症状(中断症候群)とは、薬を急に減らしたり中止したりした時に現れる身体的・精神的症状のことです。病気の再発とは異なりますが、見分けが難しい場合もあります。
離脱症状の特徴
| 項目 | 離脱症状 | 病気の再発 |
|---|---|---|
| 出現時期 | 減量・中止後1〜3日以内 | 減量・中止後数週間〜数ヶ月後 |
| 症状の種類 | めまい、ふらつき、電気ショック様感覚、吐き気 | 元の症状(気分の落ち込み、不安、不眠)が戻る |
| 持続期間 | 1〜2週間で自然に改善 | 持続的、徐々に悪化する |
| 対処法 | 元の量に戻すとすぐ改善 | 元の量に戻してもすぐには改善しない |
よくある離脱症状
SSRI/SNRIの離脱症状
- めまい、ふらつき、頭がボーッとする
- 頭や体にビリビリした感じがある
- 吐き気、頭痛
- イライラ、不安感、焦燥感
- 不眠、悪夢
ベンゾジアゼピン系の離脱症状
- 不眠の悪化(反跳性不眠)
- 不安、焦燥感の増強
- 筋肉痛、振戦
- 発汗、動悸
- (重度)けいれん、せん妄(長期大量服用例)
離脱症状が出た時の対処法
- 医師に連絡する
自己判断せず、まずは医師に相談しましょう。 - 減量ペースを緩める
離脱症状が強い場合、一旦元の量に戻し、よりゆっくりしたペースで再開します。 - 対症療法を行う
軽度の離脱症状であれば、1〜2週間で自然に改善します。その間、十分な休息を取りましょう。 - 薬の変更を検討する
パキシルなど離脱症状が出やすい薬の場合、他のSSRIに切り替えてから減薬する方法もあります。
💡 この記事の監修者
五反田ストレスケアクリニック 院長 片山 渚
- ✓精神保健指定医
- ✓日本医師会認定産業医
- ✓産業保健法務主任者(メンタルヘルス法務主任者)
- ✓健康経営アドバイザー
大学病院から民間病院まで幅広い臨床経験を活かし、患者さんが安心して治療を継続できるよう、わかりやすい情報提供を心がけています。
⚠️ 免責事項
この記事は一般的な医学情報を提供するものであり、個別の診断や治療の代替となるものではありません。薬の副作用や減薬については個人差が大きいため、必ず主治医と相談の上で進めてください。自己判断での服薬中止は再発や離脱症状のリスクがあります。
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