発達障害|五反田ストレスケアクリニック|五反田駅徒歩7分の心療内科・精神科

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発達障害

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自閉症スペクトラム障害(ASD)について

床に座り腕を組み考え事をする女性

自閉症スペクトラム障害(ASD)は、コミュニケーションや対人関係の難しさ、独特の行動パターンを特徴とする発達障害です。2020年に実施された日本における全国規模の調査(対象:5歳児)では、調整済みASD有病率が3.22%と報告されています。社会的にも大きな影響を持つ障害です。当院では、ASDについての正確な情報と適切な支援方法をご紹介し、患者様とご家族の生活の質を高めるお手伝いをしています。

ASDとは

自閉症スペクトラム障害は、以前は自閉症やアスペルガー症候群、特定不能の広汎性発達障害などと別々に診断されていたものを包括する概念です。「スペクトラム(連続体)」という言葉が示すように、症状の現れ方や程度は人によって大きく異なります。ASDの主な特徴は次のとおりです。

  • 人との関わりやコミュニケーションの取り方に特徴がある(視線が合いにくい、友達関係を作るのが難しいなど)
  • 言葉の発達や使い方に特徴がある
  • 特定の物事への強いこだわりや、決まった行動パターンがある
  • 感覚の特性がある(音や光、触感などに敏感または鈍感)

ASDの特徴は多くの場合3歳頃までに現れますが、幼稚園や学校に入って集団生活が始まってから気づかれることもあります。また、大人になってから診断されるケースも少なくありません。

診断について

ASDの診断は、アメリカ精神医学会の「精神疾患の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5)」に基づいて行われます。
診断には以下の条件が必要です。

  1. 社会的コミュニケーションと対人関係における持続的な困難さ
  2. 限定的・反復的な行動や興味、活動のパターン
  3. 幼少期からの症状の存在
  4. 症状による日常生活への支障
  5. 他の障害ではうまく説明できないこと

診断プロセスでは、発達歴の詳しい聞き取り、行動観察、標準的な評価ツールなどを用いた総合的な評価が行われます。早期の診断が早期支援につながり、それが将来の成長に良い影響をもたらすことが研究で示されています。

原因について

ASDの正確な原因はまだ完全に解明されていませんが、遺伝的要因と環境的要因が複雑に絡み合っていると考えられています。

遺伝的要因

研究によれば、ASDの約25%のケースで特定の遺伝子変異が見つかっています。家族にASDの人がいる場合、リスクが高まることも知られています。例えば、一人の子どもがASDと診断されている場合、兄弟姉妹がASDである確率は約20%に上ります。また、結節性硬化症などの特定の遺伝的疾患は、ASDの発症と関連があります。

環境的要因

環境要因も重要な役割を果たします。両親の高齢化、妊娠中の大気汚染への曝露、母体の健康問題(肥満や免疫系の問題など)がASD発症のリスク因子として挙げられています。極度の早産や他の出産に関わる要因も重要なリスク因子です。重要なのは、ASDの原因は一つではなく、遺伝的・環境的要因の複雑な組み合わせであるということです。この多様性が、症状の現れ方の違いにつながっています。

支援と治療法

ASDの支援や治療は、その人の特性や強み、ニーズに合わせて個別に計画される必要があります。
効果的なアプローチには以下のようなものがあります。

行動療法

応用行動分析(ABA)は、よく用いられている療法の一つです。良い行動を増やし、課題となる行動を減らすための方法を学ぶプログラムです。単に行動を変えるだけでなく、新しいスキルを身につけ、様々な状況で活用できるようにすることを目指します。研究によると、ABAは社会的スキルの向上や問題行動の減少に効果があることが示されています。

コミュニケーション支援

絵カードや手話、音声生成装置、PECS(絵カード交換コミュニケーションシステム)などのツールは、ASDの子どもが自分の気持ちや考えを表現するのに役立ちます。これらの道具はコミュニケーション能力を大きく向上させますが、最大の効果を得るには他の支援方法と組み合わせることが多いです。

音楽療法

最近の研究では、音楽療法もASDの支援に役立つことがわかってきました。リズムを用いた活動が、自閉症の子どもの過敏さや不安、感情面の課題に効果を示すことがあります。特定のテンポのリズム活動は、緊張状態を和らげ、感情のコントロールを助ける働きがあります。

ICT(情報通信技術)を活用した支援

近年、スマートフォンやタブレットのアプリなど、ICTを活用した支援方法が注目されています。これらのツールは、子どもの特性に合わせた学習体験を提供します。ASDの早期発見と支援におけるICT活用の長期的効果とベストプラクティスについては、研究が進行中です。

薬物療法

SSRIs(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの薬物療法が検討されることもあります。一部の薬は社会的困難さや自傷行為などの特定の症状を和らげる可能性がありますが、すべての人に効くわけではなく、副作用の可能性もあることを理解しておくことが大切です。

日常生活での工夫と対応

ASDのある方は日常生活で独自の課題に直面することがありますが、適切な支援と工夫によって、充実した生活を送ることができます。

社会的な関わりについて

ASDのある方は、社会のルールや状況について理解するのが難しいと感じることがあります。この難しさは、ASDの人特有の考え方や情報処理の仕方を見過ごしがちな社会的期待によって、さらに複雑になることがあります。例えば、面接での受け答えや履歴書の書き方など、暗黙のルールが多い場面では特に困難を感じることがあります。

日常での工夫

これらの課題に対応するため、ASDのある方々は様々な工夫をしています。例えば、独自の方法でタスクを完了することがあり、それが創造性や自己表現につながることもあります。また、「ソーシャルストーリー」と呼ばれる手法も社会的スキルの習得に効果を発揮しています。キャロル・グレイが開発したこの手法は、日常的な社会状況を物語形式で説明し、実生活での対応方法を具体的に示すことで、社会的相互作用の理解と実践を助けます。

感覚過敏と対処法

ASDのある方の多くは、環境からの刺激(音、光、触感など)に過敏に反応することがあります。この感覚過敏は、構造化された環境がない場所で特に強く現れることがあります。また、社会の期待に合わせるために自分の特性を隠す「カモフラージュ」を行うことで、疲労感や自己アイデンティティに関する葛藤を抱えることもあります。

職場での理解と支援

近年、職場での多様性と包括性への意識が高まり、ASDのある方々など神経多様性のある人々のための環境づくりが注目されています。職場での理解と適切な支援は、全ての従業員にとって重要ですが、特に従来の職場環境では独自の課題に直面することがあるASDのある方々にとって不可欠です。

雇用者の視点

イスラエルで行われた研究では、ASDのある従業員への合理的配慮に関する雇用者の視点について、次の3つの重要な点が明らかになりました。ASDのある従業員に対する雇用者の認識、ASDのある人を雇用する動機、必要な配慮の観点からの職場環境のアクセシビリティです。多くの雇用者はASDのある人の雇用に前向きな姿勢を示していますが、真に包括的な職場環境を作るために必要なリソースが不足していることが多いのが現状です。

職場での壁

ASDのある方は、定型発達の従業員には気づかれにくい特有の課題に直面することがあります。これらの壁は、企業が多様性を推進している場合でも、自分の特性を隠そうとするプレッシャーにつながることがあります。これらの壁を理解することは、ASDのある従業員と組織全体の両方に利益をもたらす効果的な解決策を見つけるために不可欠です。

より良い職場環境のために

職場でのインクルージョン(包括)を進めるために、専門家たちは数値目標による採用だけでなく、定型発達とASDの両方の従業員のための包括的な研修や教育プログラムの開発を提案しています。このような取り組みは個人の違いへの理解を深め、ASDのある人がもつ独自の強みを活かす職場環境を作ることができます。

まとめ

自閉症スペクトラム障害は単なる障害ではなく、脳の働き方の違いと考えることもできます。「神経多様性」の考え方は、ASDを含む発達障害のある人々の多様な強みと才能を認め、尊重することの大切さを強調しています。

早期の診断と適切な支援は、ASDのある方が可能性を最大限に発揮するための鍵です。社会の理解を深め、包括的な環境を作ることで、ASDのある方々がより豊かな人生を送る機会を提供できます。

当院では、ASDの診断を受けた方やそのご家族が必要な情報とサポートを得られるよう、常に最新の知見と実践を取り入れています。ご質問やご相談がありましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

参考文献

  1. Current Research on Autism in 2024 – TherapyWorks
  2. Autism Treatment Breakthrough – Mastermind Behavior Services
  3. At a Crossroads–Reconsidering the Goals of Autism Early Behavioral Intervention
  4. The Neurodiversity Movement: An Overview for Autism Service Providers
  5. DSM-5 criteria for autism spectrum disorder maximizes diagnostic sensitivity

発達外来について

発達障害は、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、限局性学習症(学習障害)など、いくつかのタイプに分類されます。これらの疾患に共通していることは、生まれつき脳の働き方に違いがあるという点ですが、早期の段階でご本人の困難さをご家族や周囲の支援者が理解し、それに適した療育(治療教育)を行うことで、ご本人の力・自信を伸ばし、周囲の人ともよい関係性を築くことができるようになります。
発達外来では、発達障害の診断と治療・療育、支援のアドバイスなどを行います。お子さんとご家族が笑顔で安心して過ごせるよう、サポートを一緒に考えていきます。

対象となる疾患と症状

自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、限局性学習症(学習障害)、チック症、吃音(きつおん)、知的障害などが主な対象疾患です。

自閉スペクトラム症(ASD:autism spectrum disorder)

自閉スペクトラム症(ASD)とは、以前、小児自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害などと呼ばれていた発達障害の総称です。生まれつきの脳機能の障害から生じる発達障害の代表的な疾患で、特性の強さや現れ方は一人ひとりで異なります。
典型的な特徴としては、対人関係やコミュニケーションが苦手、言語発達の遅れということがあります。コミュニケーションの場面で、言葉や視線、表情、身振りなどを用いて相互的にやり取りをしたり、自分の気持ちを伝えたり、相手の気持ちを読み取ったりすることが苦手です。もう一つ重要な特性として、興味が狭い範囲に集中しやすく、周囲に関心を払うことが難しいということがあります。特定のことに強い関心を持っていたり、こだわりが強かったりということは、ASDの代表的な特徴の一つです。その他にも、感覚の過敏さ、運動の不器用さなど、様々な特性がみられることがあります。
一般的に、乳幼児期には精神発達・運動発達の遅れや感覚過敏などが主な特性としてみられ、早ければ乳幼児健診でその可能性を指摘されることもあります。児童期以降では学業や日々の生活、周囲との関係がより具体的な課題としてみえるようになります。
日本では、幼児期からの早期支援が活発に行われる地域が増えており、支援を受けたことで、自閉スペクトラム症の特性がありながらも、充実した社会生活を送っている方がたくさんいます。一方、自閉スペクトラム症は、「特性から生じる問題」のほか、過剰なストレスや失敗体験が引き金となって「二次的な問題」が生じることも少なくありません。特性がごく弱い人でも、きちんと対応を受けないでいると、周囲の人との違いに悩んだり、誤解され孤立したりし、二次的な問題として身体症状(頭痛、腹痛、食欲不振、チックなど)、精神症状(不安、うつ、緊張、興奮しやすさなど)、不登校やひきこもり、暴言・暴力、自傷行為などに発展する可能性があります。
お子さんの発達に気になる点がある場合には、できるだけ早めにご相談ください。早期からその子の特性に合った支援を開始することで、二次的な問題を防ぎながら発達を促すことができます。

注意欠如・多動性症(ADHD:attention deficit hyperactivity disorder)

注意欠如・多動性症(ADHD)は生まれつきの脳機能の特徴であり、不注意、多動性、衝動性の3つの主症状によって定義された発達障害のことです。
「不注意」の症状は、学校の勉強などでミスが多い、課題などに集中し続けることができない、話しかけられていても聞いていないように見える、最後までやりとげることができない、作業などの段取りや整理整頓が苦手、集中力が必要なことを避ける、忘れ物や紛失が多い、気が散りやすい、などがあります。「多動性・衝動性」では、落ち着きがない、すぐに席を離れる、座っていても手足をもじもじする、おとなしく遊ぶことができない、しゃべりすぎる、順番を待つことができない、他人の会話やゲームに割り込む、などが認められます。
ADHDの基本的な治療目的は、これらの症状を完全になくすことではなく、特性と上手く付き合っていく工夫を見つけることや、特性に合わせて環境を調整することで二次的問題(抑うつ感や引きこもり、逸脱行動など)を防ぎ、生きづらさを緩和して本人の成長を促していくことです。心理・社会的療法を中心とし、必要に応じて薬物療法を併用しながら治療を進めます。

限局性学習症(学習障害)(LD:Learning Disability)

限局性学習症(LD)とは、全般的な知的発達には問題がないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」など特定の能力のみに困難が生じる発達障害のことです。人によって症状の現れ方が異なったり、意識しないと気づかれにくかったりと、診断が難しい障害でもあります。目安として、学校での学習到達度に、1~2学年相当の遅れがあるのが一般的です。
読字障害は、文字は読めますが、文章を読むのが極端に遅かったり、読み間違えたりすることがよくあります。書字障害は、文字を書く、文章を綴るといったことが難しくなります。算数障害は計算や推論することが難しいです。学習症の子どもに対しては、教育的な支援が重要になります。子どもにある困難さを正確に把握し、決して子どもの怠慢さのせいにせず、適切な支援の方法について情報を共有することが大切です。
最近は、発達が気になるお子さんへ早期療育を行うケースが増えてきています。早期から介入し、子どもに合った環境の中で学ぶことで、必要なスキルを身につけやすくなります。また、抑うつなど二次的な問題の予防にもつながるといわれています。

チック症

チックは、回数の多いまばたき、顔をしかめる(運動チック)、咳払いや舌打ち(音声チック)など、意図せずに起こってしまう素早い身体の動きや発声です。一時的に現れる子どもも多く、経過をみてよいものです。しかし中には様々な運動チックと音声チックが1年以上持続し、日常生活に支障をきたすほどになるトゥレット症という病気もあります。このトゥレット症では、飛び上がる、自分の体や足を叩く、しゃがむ、おなかに力をいれる、単語をいうなど、複雑な動きや発声を伴うこともあります。症状は10~15歳ころに顕著になりますが、成人になっても症状が継続する場合もあります。治療としては、チックが現れそうになったときに、チックと拮抗した動きをするハビットリバーサルがあります。日本ではトゥレット症に有効性が認められた薬はありませんが、統合失調症の薬などが有効であることが知られています。

吃音

吃音とはスムーズに話すことができない状態をいいます。同じ音を繰り返したり、音が伸びたり、なかなか話し出せないといった様々な症状があります。吃音は、厳しい子育てや本人の精神的な弱さの結果ではなく、体質的な要素が強いことが知られています。
吃音があることで、からかいやいじめの対象となっていないか、また、学校の発表などが本人の苦痛となっていないかなどを把握し、環境調整を行うことが大切です。吃音の治療には、言語聴覚療法や認知行動療法が行われます。

知的障害

一般的に、知的能力の発達が水準に達していない状態をいいます。ここでいう知的能力とは、日常生活において物事を行う能力のことを指します。小さなお子さんの場合、成長に個人差があるため、発達が遅れていても一概に知的障害とは言えないケースも多いのですが、気になる症状があれば、知能検査や発達検査などで医学的に判定することができます。知的障害を引き起こす原因としては、脳の発達障害や脳の病気・損傷などが考えられています。

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