2026年4月13日

睡眠×セロトニン×メラトニン 今夜からできる3ステップ
今夜からできる3ステップ
- セロトニンとメラトニンは「同じ原料(トリプトファン)」から作られる親子関係にある
- 昼間にセロトニンを十分に合成することが、夜のメラトニン分泌の前提条件になる
- 今夜からできる3ステップ(朝の光・夕方のブルーライト対策・食事)で睡眠の土台を整える
「疲れているのに眠れない」「夜中に何度も目が覚める」「朝、起きられない」——このような睡眠の悩みを抱えている方は少なくありません。
精神科の外来では、こうした睡眠の問題が、うつ病や不安障害の背景に潜んでいるケースを日常的に目にします。そして多くの場合、睡眠の質を左右しているのは「薬」ではなく、日々の生活の中にあるわずかな習慣のずれです。
この記事では、セロトニンとメラトニンという2つの脳内物質の関係を科学的に整理したうえで、今夜からすぐに実践できる3つのステップをご紹介します。
セロトニンは「日中の気分や覚醒」を担い、メラトニンは「夜の眠気と睡眠」を促す——よく知られたこの対比ですが、じつは両者は同じ原料から作られる「親子」のような物質です。
この合成経路を理解することが、眠れない夜への根本的なアプローチにつながります。
セロトニンとメラトニンはともに、食事から摂取する必須アミノ酸「トリプトファン」を出発点として合成されます。研究(Maffei, 2021)によると、この経路は次のように進みます。
この経路において重要なのは、昼間に十分なセロトニンを合成していなければ、夜にメラトニンの原料が不足するという点です。つまり、夜の眠れなさは「夜の問題」だけでなく、昼間の生活習慣から始まっています。
実際に、光環境とセロトニン代謝の関係を調べた研究(Liu et al., 2025, Molecular Psychiatry)では、光刺激が少ない環境下ではセロトニン代謝産物が低下し、睡眠の質が悪化することが示されています。
合成経路を理解したうえで、日常生活でできるアプローチを3段階に整理しました。いずれも薬を使わず、今日から実践できる行動です。
セルフケアだけでは難しいと感じたら、専門家と一緒に整える方法もあります。
上記の3ステップは、多くの方の睡眠の土台を整えるうえで有効と考えられます。しかし、慢性的な不眠や、うつ・不安との関連が疑われる場合は、セルフケアだけでは対応が難しいことがあります。
精神科では、睡眠の問題を「症状の入り口」として、より包括的な評価を行います。たとえば:
- 睡眠日誌を使った客観的な睡眠パターンの把握
- 背景にうつや不安障害がないかの鑑別
- 認知行動療法(CBT-I)などの非薬物療法の提案
- 必要に応じた薬物療法の検討(依存性の低い薬剤も選択肢のひとつ)
「薬に頼りたくない」という方にこそ、一度ご相談いただくことで、セルフケアの方向性を確認し、必要なサポートを一緒に考えることができます。
睡眠を支えるメラトニンは、昼間のセロトニンなくしては合成されません。そしてセロトニンは、食事から摂るトリプトファンを原料に、光刺激によって合成されます。この「脳内物質の連鎖」を意識するだけで、睡眠へのアプローチはシンプルになります。
- ステップ1:朝の光でセロトニンを充電する(起床後1時間以内・15〜30分)
- ステップ2:夜21時以降はブルーライトを遮断してメラトニン分泌を守る
- ステップ3:夕食にトリプトファン豊富な食品を取り入れて「素材」を整える
知識を得ることは、最初の一歩です。次のステップとして、あなたに合った方法を一緒に考えてみませんか。
セルフケアだけでは難しいと感じたら、専門家と一緒に整える方法もあります。
- Maffei ME. 5-Hydroxytryptophan (5-HTP): Natural Occurrence, Analysis, Biosynthesis, Biotechnology, Physiology and Toxicology. Int J Mol Sci. 2021;22(1):181. DOI:10.3390/ijms22010181
- Zhao D, et al. Melatonin Synthesis and Function: Evolutionary History in Animals and Plants. Front Endocrinol (Lausanne). 2019;10:249. DOI:10.3389/fendo.2019.00249
- Kałużna-Czaplińska J, et al. How important is tryptophan in human health? Crit Rev Food Sci Nutr. 2019;59(1):72-88. DOI:10.1080/10408398.2017.1357534
- Knufinke M, et al. Restricting short-wavelength light in the evening to improve sleep in recreational athletes – A pilot study. Eur J Sport Sci. 2019;19(6):728-735. DOI:10.1080/17461391.2018.1544278
- Liu S, et al. An integrated multi-omics analysis identifies novel regulators of circadian rhythm and sleep disruptions under unique light environment in Antarctica. Mol Psychiatry. 2025;30(6):2395-2406. DOI:10.1038/s41380-024-02844-7
五反田ストレスケアクリニック院長
精神保健指定医
日本医師会認定産業医
産業保健法務主任者(メンタルヘルス法務主任者)
健康経営アドバイザー